北海道のセグロカモメ


 セグロカモメは北海道の場合、その多くが春と秋に主に通過する旅鳥ですが、道南沿岸ではかなりの数が越冬していると思われます。秋の渡来は道北・道東では8月中旬〜下旬で、本格的に数を増すのは9月中旬過ぎからです。道央圏では道北、道東にやや遅れて例年9月中旬に初渡来しますが、数が多くなるのはさらに遅れて10月になってからです。

 ここでは、春のセグロカモメについて取り上げているので道央圏の春の渡来状況について述べてみます。春の太平洋側では3月下旬からぱらぱら少数のセグロカモメが見られるようになり、4月〜5月上旬にかけて秋と比べるとかなり小規模ですが、移動中のセグロカモメが見られます。一方の日本海側では4月いっぱいかなり大きなセグロカモメの群が見られます。5月上旬まではセグロカモメ主体の群が見られることも多いでしょう。
春の渡来の終認は大体5月下旬で遅い年では6月10日過ぎまでいたこともあります。いずれにしろ成鳥の場合は分かりやすいですが、第1回夏羽は磨耗が激しくわかりにくいのでその多くが見逃されている可能性もあります。

 
 
第1回冬羽→夏羽

第1回夏羽は磨耗してくるとオオセグロカモメなどその他の大型カモメに似てきます。特に春期には若い大型カモメの
混群にセグロカモメが混じるとかなり慣れないとわかりにくく、識別はやっかいです。
 
 
4/15

別個体なので単純に比較はできないが、換羽が進行し、幼羽(右:10/30)と比べるとかなり色合いが異なる。
にもかかわらず初列風切はほぼ黒いままなことに注目。体型もまた、個体・体勢が違うので単純に比較は出来ないが、
2羽とも似た傾向がある。

 
4/15

頭〜腹がかなり白い個体だが、4月中ごろの北海道ではこうした個体もよく見かける。モンゴルカモメにも似ているが、
同日のモンゴルカモメ(右)と比るとそこまで磨耗しておらず、白味も弱い。上面の模様は比較的はっきりしていて、
モンゴルカモメとは大分違うのがわかる。


4/29

4月下旬の個体。全体の磨耗は比較的激しく、模様もはっきりしない。嘴は先端のみ黒くて他はピンク色に変化
している個体。セグロカモメでは時期が経つにつれこうした特徴のでる個体も多いが、そうでない(黒いまま)の
個体も極普通にいる。

 
5/3

換羽や磨耗状態は標準的?な普通のセグロカモメ。右写真は同日のオオセグロカモメ。

 
5/3

上面の模様がはっきりした個体で、模様だけ見るとモンゴルカモメにも似ているが、同日のモンゴルカモメ(右)の頭〜胸が
真っ白なのに対して、頭〜首元や腋〜腹にかけては褐色斑が多いのがわかる。


 
5/13 左:上セグロカモメ、下オオセグロカモメ 右:左と同一セグロカモメ

セグロカモメは内側初列が淡色、外側初列が黒くて背には淡い灰色の羽が見える。オオセグロカモメの翼は一様に褐色。
降りているのを見ると、この時期にしてはわかりやすい個体だった。


5/13

飛翔時はオオセグロカモメとはまるで違う。セグロカモメ系の個体は下面に縦状斑が出やすい傾向があるようにも思う。
後のオオセグロカモメと比べても、セグロカモメは白黒のコントラストが強く、茶褐色で潰れたような模様があまり見られない
傾向があるかもしれない。

 
5/13

腹部はまだべったとした褐色斑が残る。雨覆いはかなり磨耗して黒斑模様もほとんど潰れているが、初列風切は左の
オオセグロカモメが茶褐色で汚いのに対してセグロカモメはまだまだ黒い。

 
5/21

磨耗が激しく特に上面で顕著。首もとの斑は縦斑状で細かいのがわかる。体型は細身で初列風切が長くて黒いのが特徴。
右はほぼ同時期(5/13)の時期的にはあまり磨耗していないオオセグロカモメ。

 
5/21

磨耗で全身白っぽいが模様も潰れているためコントラストは弱め。同日のモンゴルカモメ(右)と比べるとそこまで白くない
印象だった。


5/21

5月の中旬に見る個体としてはかなり新鮮な個体だと思う。全体的に磨耗していているのがわかるが雨覆いや肩羽の
模様もまだはっきりしていてわかりやすい。初列風切も黒くて長い。


5/29

かなり白くなっていてモンゴルカモメにも似ている。磨耗の度合いに対して初列風切はまだかなり黒いことに注目。嘴は
先端のみ黒くなっている個体。オオセグロカモメとは似ていないがモンゴルカモメの可能性はあるかもしれない。


5/29

細身の体型に磨耗して褪色しているもののまだまだ黒い初列風切などの特徴からセグロカモメ第1回夏羽だということに
気づいた。セグロカモメも5月中〜下旬になると頭〜下面にかけてや雨覆いは磨耗・褪色によりかなり白くなる。

 
6/10

6月に見られた個体。同時期のオオセグロカモメ第1回夏羽では初列風切の黒みが強い個体はまれ。オオセグロカモメと
比べて全身白黒のコントラストが強い。肩羽はまだ黒斑模様が見られるが、雨覆いはほぼ真っ白。
右写真のオオセグロカモメと比較して初列風切の色だけでなく体型体格の雰囲気などをつかむことも識別には必要。
 
 
  
参) 左:セグロカモメ第1回夏羽 右:セグロカモメ第1回夏羽〜第2回冬羽

第1回夏羽〜第2回冬羽はこんな感じ。初列風切はここまで淡色になるが全身の色合いはシンプルで茶褐色部はそれぼど多くなく、
全体的に白黒系の印象?をうける。肩羽や雨覆いは灰色の羽がはえる前は写真のような横斑模様になる傾向が強いように思う。
体型や顔つきは典型的なセグロカモメ。日本ではなかなか見ることができない羽衣状態。
ちなみに左は越夏個体、右は10月の成長異常の個体。
 
 
第2回冬羽〜それ以降

この年齢のセグロカモメは背中にグレーの羽が見えるのでほとんどの場合オオセグロカモメとの識別で迷うことは
ありませんが、ホイグリン系のカモメやモンゴルカモメとは難しい場合も多いです。ここでは識別については触れずに
写真だけを並べておきます。

 
 


すべて4/29

 
2枚とも5/3

 
左:5/4 右:5/8

 
左:5/13 右:5/29

春季でもセグロカモメの場合はほぼ共通して頭から腹にかけて斑が残る傾向が強い。
 
 
2枚ともモンゴルカモメの可能性が高い個体。(5/1)

頭〜腹にかけてかなり白くほぼ無斑。セグロカモメはもっと斑の多い個体が普通と思われるが、100%そうではない
のでなんとも言い難いところ。
 
 
成鳥

春先のセグロカモメ成鳥はかなり頭が白くなり、モンゴルカモメの成鳥との識別がかなり厄介になってきます。
しかし、一方では5月下旬や6月に見られたセグロカモメ成鳥でも後頸部にまだ冬羽の斑が残っていたりとその
個体差はかなりのものです。

 
 
4/15

左写真の個体は後頸部に細かい縦斑が見られ、右写真中央の成鳥は頭〜胸にかけてまだかなり多くの斑が残ります。
しかし、右写真中に写る他の成鳥個体ではほぼ頭は白く、その多くが左写真の個体のような状態です。

 

 
4/15

すべての個体で頭は白っぽくて後頸部には斑が残り、右下の個体は胸にも細めの斑が残る。この日はこのような
羽衣状態の個体が割合的に一番多かった。

 
4/15

モンゴルカモメの可能性がある個体。頭が無斑で翼や首も長い。翼パターンは未確認で、嘴の黒斑はなかった。
この見られたセグロカモメ約600羽中頭が完全に無斑だった個体は30羽程度か?
ちなみにこの個体もモンゴルカモメかもしれないというだけで、セグロカモメの可能性も十分にある。

 
4/15

こちらも頭は無斑。翼パターンなどは未確認。時期的に頭が無斑のセグロカモメも勿論いるので、モンゴルカモメとの識別は
かなり難しいことが多い。


4/29

翼パターンはセグロカモメでは先端から6枚分(P5まで)黒斑が見られる個体が割合的に一番の多い。この個体の
ミラーは1つだが、ミラーは2つの個体の方が割合的には多い気がする。

 
5/1

左写真の個体を含めてこの場所にいた3羽の成鳥のうち2羽には後頸部にまだ斑が残っていた。右写真の個体は
完全に夏羽だった。


5/13

後頸部に極僅かな斑があるのがかろうじてわかる。セグロカモメ成鳥この時期まで斑が残る個体もいる。

 
6/10

6月の成鳥個体。左写真で首もとの褐色斑が極僅かに残っているのがわかる。翼パターンは先端から7枚目まで
黒い部分があり、ミラーは1つ。
この時期はセグロカモメの成鳥自体観察できることは貴重だが、この個体はまだ頭に斑が残っていた。
 
 
 と、まぁこんな感じ春のセグロカモメの紹介は終了です。とにかく春のセグロカモメをこんなに遅くまで楽しむことができるのは北海道だけ!!ぜひとも海岸でカモメを観察した際にはセグロカモメが混ざっていないかチェックして見ましょう!春のカモメ観察は秋や冬とは違った楽しみを与えてくれるはずです。
 
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